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初夜
黒瀬は、シャワーの音を聞きながらネクタイを緩めた。
ベッドの上に、理人の脱いだジャケットとネクタイがあった。何の気なしに手にとって、黒瀬はそのジャケットから匂い立つ淡い香水で、抑えていた劣情が動き出した。
黒瀬は服を脱ぎ、理人のいるシャワールームへ向かった。
声もかけずに扉を開けると、白い湯気の中で理人は驚いて振り返った。
「先生・・・っ」
黒瀬は泡に包まれた理人の身体を引き寄せた。唇を合わせ、舌を割り込み、裸の理人の細い腰に手を回した。
「申し訳ない・・・もう、我慢できそうにない」
黒瀬の手が理人の中心に触れた。びくんと震えて、理人は小さな声を上げた。
「・・・あ・・・っ・・」
背後から抱きしめて、中心を愛撫しながら黒瀬は理人の首筋に顔を埋めた。滑らかな肌に、黒瀬は自分自身が昴ぶるのを感じた。乳首を弄ばれて、理人は背中をしならせ、黒瀬の胸に寄りかかった。その淫らな表情にぞくぞくしながら、、黒瀬は理人を振り返らせた。
バスルームに膝をついて、黒瀬は理人を口に含んだ。
「・・・んっ・・っあっん・・・はあっ・・・」
黒瀬の口に包まれ、舐め上げられ、舌先で弄ばれ、理人は高い声で鳴いた。
「せんせ・・・っ・・あっ・・・んぅ・・っ」
がくがくする膝で必死にバランスを保つ理人の後ろに、黒瀬の手が伸びた。理人の中が黒瀬の指に絡みついて引き留めるようにうねる。
黒瀬の指先が肉壁をなぞり、それに併せて理人が喘ぐ。
「やっ・・・ああっ・・・ひぁあっ・・・」
「・・・ベッド・・・行こうか・・・」
二人はろくに身体も拭かずにもつれるようにベッドに倒れ込んだ。黒瀬は続けて理人の後孔に指を滑らせた。
理人はうつ伏せに横たわり、シーツを握って声を抑えた。黒瀬の指に解し広げられ、黙っていても腰が浮いた。黒瀬は震える背中を見下ろし、後孔に舌を入れた。
「いっ・・嫌ぁっ・・・」
嫌がりながらも、理人の身体は勝手に反応した。
黒瀬は羞恥に身をよじる理人を、愛おしく思った。
特別な状況でしか愛情を感じられない自分に嫌気が差しながら、黒瀬は理人が脚をがくがくさせるのを見ながら、さらに深く舌を差し込んだ。
理人が顎をあげ、背中を強く反らせ、声にならない声で喘いだ。
それを見た黒瀬は理人を仰向けにさせた。
「・・・どうした・・・?」
「・・・っ・・・」
目に涙を溜めて、頬を赤らめ、理人は黒瀬を見上げた。そしてかすれた声で哀願した。
「・・れて・・・欲し・・です・・」
黒瀬は理人の片脚を肩に担ぎ上げた。理人の足首を熱い舌で舐め、自分の中心を隠そうとする理人の片手を持ち上げた。
「隠さないで・・・全部見たい」
顔を背けた理人の入り口に先端をあてがい、黒瀬は囁きかけた。ゆっくりと理人の中に挿入っていくと、待っていたとでも言うように肉壁が黒瀬にまとわりついた。
「んあ・・・っ・・」
少し低い声で、理人が呻いた。黒瀬は締め付けられる感触に、無意識に唇を噛んだ。時間をかけて全てが飲み込まれると、黒瀬の全身は甘い快感に支配された。
「・・・動いても・・・?」
尋ねると、理人は半開きの唇で微笑った。花が咲いたように艶やかな、
男を骨抜きにする色香を放って、理人は微笑でYESと言った。
黒瀬のリミッターが外れた。
深く、理人の最も奥まで突き上げると、黒瀬の身体に甘美な快感が流れ込む。繰り返して穿つたび、感じたことのない巨大な波が黒瀬を襲う。
兄の真人は、また違った。
黒瀬が楽しむのと同じように、彼は楽しみ、二人はお互いの身体に溺れた。
理人は、そうではなかった。
強引に抱かれることを待っていたような素振りで身体を開き、じわじわと快感に誘う。気がつくと理人に飲み込まれるように黒瀬は何度も突き上げていた。ベッドの上での主導権は理人が持っていると言っても過言ではなかった。
何度かのドライオーガズムを経て、理人が放つまで、黒瀬は理人のしなやかな白い姿態をたっぷりと堪能した。
黒瀬の腕の中で、ぴくりと理人の指が動いた。うっすらと瞼が開いて目の前の裸の胸をぼんやりと見ていたが、そっと顔を上げて黒瀬を確認すると、理人は小さく、あ、と呟いた。
「少し・・・眠れた?」
穏やかな黒瀬の声に、目を擦りながら理人はあたりを見回した。
ホテルの白い壁紙と、広いベッドに、そこがどこなのか気づくと、おそるおそる理人は尋ねた。
「僕・・・寝てしまったんですか・・・」
「少しやりすぎてしまったかな」
「・・・いいえ・・・でも」
言いよどんで黒瀬の顔を見つめた理人は、少し恥ずかしそうに微笑した。
「・・・こんなに気持ちよく眠れたのは・・・久しぶりです」
理人は黒瀬の腕を、遠慮がちに触った。
「・・・腕が・・・先生の腕に包まれているのが、心地よくて・・・」
黒瀬の二の腕に頬を寄せ、理人は軽くその肌にキスをした。黒瀬は驚きを隠しながら、理人のさらさらした髪を撫でた。
「理人・・・と、呼んでいいかな」
理人は小声でえっ、と呟き、黒瀬の顔を見上げた。黒瀬は優しく微笑み、理人の唇を指先でなぞった。
「私は・・・一樹という。君を名前で・・呼びたいのだが」
「・・・はい。理人と呼んで下さい。・・・一樹さん」
黒瀬は理人と唇を合わせた。
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