第9話

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* 「んん……っ、ぁ……あ……」 「っ……前から、きつい?」 「ん、ん……っ、ぁ……いや、へ、いき……っ、ぁ……」 「根元まで入れるね?」 「……っ、ぅああっ!あ………、ぁ……」 「あ、すげ、全部、全部入ってる……」  久々の行為なのもあったけれど、井筒がいつも以上に声を出すのに驚いた。今までも喘いではいたけれど、声をかみ殺すように、耐えるようなのが多かったのに。受け入れられているという実感に、阿南は嬉しくなり、そして、井筒の長い足を抱える。 「ぁ、あ……な、なに?」 「横から抱くから、もっと奥までいく?」 「!?奥?お、奥ってなに!?なんだよ!?なあ!?」  阿南の目に、やばいと思ったのか井筒が一瞬抵抗する。それに阿南は諦めたように体を反転させて、井筒の体を四つ這いにさせた。 「わかった。じゃあ、結腸までいく前に、後ろでいこ?ん……っ、ぁ」 「え?あ?……ぁ、あ、あ、あ、んんっ!!」  後ろから、パンパンと肌を激しく打ち付けられる。一気に引き抜かれる喪失感のすぐ後、奥まで埋められて突かれる感触に、井筒はシーツをかきむしった。 「すご……井筒さんの、圭さんのお尻、すげえエッチ」 「っ、ぁ、あ、うる、っせ……、んんっ!」  憎まれ口を叩きたくても言えないのか、必死でシーツに顔を押し付けて耐えている様が可愛くて仕方がない。背中に何度も口付けると、そのたび震えて声を出してくれる。その素直な反応が嬉しくて仕方がなく、阿南は本当に恋人になれるのだと実感した。 (いつも、嫌そうにしか抱かれてくれなかったのに……すごい、声出してくれる。すごい、すごい、めちゃくちゃエッチ……感じてくれてるの嬉しい)  頭の中で井筒への愛だけが溢れて、もう何も考えられなくなっていく。激しく腰を揺さぶり、中を奥まで突くけれど、後ろでイって欲しい、もっと気持ちよくなって欲しいという願いだけで、目の前の体をあますところなく視姦したくなった。ここ好きだよな、とずっと避けられていた箇所を先端で攻めていく。激しくそこをこすると、いや、と井筒が逃げそうになるのを上から押さえつけた。 「っ、だ、ぃき、あ、ぁ、そこ、そこ、だめ……っぁあ!」 「っ、ここ、気持ちいーでしょ?圭さんの、いいとこ……っ」 「やっ、ぁ……だめ、ダメだって、そこ、そこ、変……っ」  逃げる腰を抑えつけて、ガクガクと縦にも揺らし、先端で思い切り激しく擦ると、井筒は激しく肩から腰を震わせた。キュウっと中が締まり、触れていない先端からビュクビュクと精液が迸る。余韻からか腰を揺らしてシーツに先端を押さえつけて耐える井筒の痴態に、阿南はゴクリと息を飲んだ。 「あ……ぁ……あ……」 「気持ちよかったね?お尻でイくの上手い……才能があるのかな」 「っ……!」  お前な、と文句を言いたくても、声がかすれて視線でしか伝えられないようだ。井筒の締め付けを耐えた阿南は、さっきと同じく井筒の左足を抱えあげて横抱きにした。 「っ、だ、大毅、なに!?なあ!?」 「なんか今日……すげえ体開いてくれてる感じがして……多分、奥まで行けるから」 「なあ、だから、さっきからその奥までってなんだよ!?」 「だから、S字結腸のとこ。トントンってしたら、すごくいいんだって」 「はあ!?何知識だ、それは!?」  目がやばかったのか、井筒は慌てて阿南を抑えるように抵抗し始めた。俺ちんこでかいから届くって、いや、そういう問題じゃねえし!とよくわからない攻防の後、井筒が折れたように「今日はやめて欲しい」と言い出す。 「なんで?もっと気持ちよくなって欲しいし……」 「っ、も、もう十分だって!」 「え?」 「っ………、きょ、今日は、色々ありすぎて、もう、これ以上したら、意味わからん……っ」  自分の下にいる憧れの男がそんなことを言い出すのに、阿南はかあっと首から上を真っ赤にした。井筒は、うう、と口元を迷わせた後に観念したようにボソリと呟く。 「お前とのセックス、き、気持ちいいから、ちゃんと……」 「っ!!」  井筒からの言葉に全身がブワッと沸き立つ。顔を真っ赤にした阿南は、そのまま固まって、そして泣きそうになった。井筒はそんな相手に呆れると、恥ずかしそうに視線をそらす。 「い、言わなきゃわかんねえのか……ばか」 「だって、今まで言ってくれたことなかったし……っ」 「だから……今日はそんな焦られても、その、困るから……」 「うん……っ」  井筒の言葉に震えた阿南はその体に思い切り抱きついてシーツに沈む。お前も重いんだよ……と井筒は呆れながら天井を見ている。阿南はその耳元で声をかすれさせた。 「お、俺は……今までのどのセックスよりも、今が一番気持ちいい……っ」 「……ヤリチンに言われるのは光栄と思った方がいいのか、まあ複雑だな……」 「気持ちいいよ……っ」  ボロボロと止まらない涙に、多分呆れられている。けれど、井筒の声は優しくて。繋がったまま、その大きな掌がポンポンと阿南の頭を撫でた。 「泣くなよ……ばか」  しばらくそのままで居て、と優しくねだってくれる恋人に、阿南は耳元からキスをする。涙のはずなのに、なんだかすごく甘い気がして、二人は緩くその舌を絡めて重なった。
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