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 途中の顔見知りの奥さんはもうすでにいなくなっていた。  そうして財布を右手に掴んだまま、私はスーパーの中に入った。そして若菜を連れて再びレジに並んだ。さっきまでの混雑はだいぶ解消しており、並んだときには二人しか待っていなかった。 「もう、おねえちゃんったら、そそっかしいんだから」 「えへへ、ごめんね」  少し照れ笑いしながら答えた。エアコン聞いた室内が、火照った体を急激に冷やしてくれて気持ちよかった。二往復も走ってしまったけど、これできちんと会計ができると思うと、なおさら気持ちよかった。  会計の順番が回ってきて、レジ係の中年女性が、「三三五四円です」と言った。  私は財布を開けた。中身を見た。あれ……、おかしい。 「お姉ちゃん?」  若菜が声をかけてくれたみたいだけど、私の頭は真っ白になてしまい、妹の声が全く聞こえなかった。。  二〇センチほどのサイズで、お札も入れることのできる厚手の財布だ。中は左右の仕切りがあった。その片方にお札を入れ、もう片方に小銭を入れていた。そういう使い方をしていた。していたはずだった。しかし、いま中を見ると、右の方には確かに小銭が入っているのだが、左の方に入っているハズのお札が入っていない。 「ねえ、お姉ちゃんってば」 「ゴメンね、若菜。またここで待っててくれるかしら……」 「どうしたの、お姉ちゃん?」 「財布の中に、お金が……、お金が……、入ってなーい!」  私はそう叫びながら、レジから走り出していた。 (了)
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