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星を食べる男の子の話
僕ね、お星さまを食べるの。
赤いのとか、黄色いのとか、白いの、桃色のもあるよ。
それはね、とっても小さくて、キラキラしてて、甘いの。
でも、普段は僕の手が届かないところにあるんだ。子どもだから、あんまり食べちゃダメよってお母さんが言うから、お父さんは僕の手が届かないところに置いちゃったの。
深い青の中に浮かぶ小さなお星さま。小さな僕の小さな指先よりも小さい、綺麗な綺麗なお星さま。
ねぇ、君はお星さまを食べたことがある?
僕より大きい君は、きっと、僕よりたくさん食べているんだろうな。
いいなぁ、僕ね、大きくなったら、お星さまをお口いっぱいにして食べるのが夢なの。甘くて、口に入れるとそっと溶けるお星さまを、口の中にたくさん入れるの。
きっとそれは、幸せな味がするんだろうな。
今はまだ小さいから、たくさんは食べられないけどね、それはそれでいいかなって思うんだ。
だって、そのぶん、一つ一つのお星さまを味わって食べられるでしょう?お星さまを手に取って、色を楽しんで、そっと口に運ぶ。すると、優しい甘みが、口の中いっぱいに広がっていくの。
そうしたらね、心の中が、ふわぁっ…て、優しく、幸せになって、あったかい気持ちになるの。
ねね、お母さん。もう一個だけ、食べてもいい?もう一個で終わりにするから。
やったぁ、ありがとう。じゃあ、瓶を取ってちょうだいな。僕じゃ届かないんだもん。
ありがとう、お母さん。いただきまーす!
男の子は、深い青色の瓶の中から、黄色いお星さまを一つだけ取り出し、ゆっくりと頬張りました。
瓶の中には、男の子にとっての小さな宇宙が広がっていました。
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