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納屋から出てきた抽象画と壺
ミヤビは、某IT企業に勤務するアラサーのOL。一人暮らしの都会は息苦しく、夏休みを利用して実家で羽を伸ばそうと帰省したとき、家に着いた早々に両親から納屋の片付けの手伝いを頼まれた。
ため息交じりに長旅の疲れを麦茶1杯で癒した後、実家に残してあったジャージに着替え、マスクと軍手を装着し、短い長靴を履いて両親の背中を追う。
母屋の隣にある納屋は、築八十年の傾きかけた木造の小屋。大昔は農機具を入れていたが、ミヤビが小さいときに実家が農業をやめてから不要品の格納場所になっていた。
「母さん。やっと捨てる気になったの?」
「違うわよ。不要品を何オクとかで売るの。何だっけ、ほら――」
「モバオクとか?」
「そうそう、それ」
「やり方知ってるの?」
「あんたに任せるわよ」
「仲介手数料取るけど、いい?」
「普通、手数料くらい取るでしょう?」
「……あのねぇ、私が取るの」
「あら、イヤだ。親子なのに?」
「当然」
「今、暇でしょう?」
「ブラックな親だぁ……」
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