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不要品を乱雑に押し込んできたツケを今払うときが来た。納屋の扉を開けて現れたのは、埃を被ったガラクタの山。見渡した感じでは、ビビッと来る物は皆無で、このまま粗大ゴミ置き場へ放り出したくなる気分。この中から、いわゆる「お宝」の候補を拾い出し、ネットオークションで処分しようというのだから、無理難題もいいところだ。
気分が重くて鈍い動きの体を納屋の中に入れ、ガサゴソと始めている両親の姿を眺めていたら睨まれたので、腰を屈めて手伝う振りをする。
「あ、これ、使えるわ」
何かと思って母親の声のする方に視線を向けると、古びた木箱から取り出したねっとりと光る黒い茶碗を顔の前で品定めしている。もしかしたら昔の名工が丹精込めて作った年代物の茶碗かも知れないが、使うと言うから別にいいだろうと思っていると、
「お、こっちも、何かに使えるぞ」
今度は父親が花鳥風月を描いた大皿を持ち上げて微笑んでいる。古伊万里を大皿料理に使うのも乙なものかもしれないから、放っておく。
結局、両親は売る物よりも使える物ばかり探し当てているので、自分の周囲にも何か一人暮らしに使える物でもあれば手間賃代わりにもらおうと思って探していると、汚い整理ダンスの奥に薄い箱が壁に立て掛けてあるのが見えた。
――気になる。
こうなると、手を伸ばして届かない物でもすぐには諦めず、整理ダンスを力尽くで避けて薄い箱に手をかけた。
「絵かな?」
ミヤビの独り言に両親が「「え?」」と同時に言葉を発したので、彼女は「洒落かい」と切り返した。
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