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箱を開けると埃が舞ったので、いったんは顔を背ける。頃合いを見て、箱の中を見てみると、濃い茶色の額縁に入れられた色彩豊かな抽象画だった。
細い線やら太い線がキャンバスを走り抜け、三角やら四角の図形が踊る。絵の具のゴテゴテした感じから油彩画であることは素人目にもわかった。
ミヤビは額縁をつかんで持ち上げ、振り向いて「ねえ」と問いかける。
「これ、何?」
両親は、線対称に無言で首を傾げる。
「お爺ちゃんって、絵が好きだったっけ?」
二人は、今度は同時に肩をすくめる。
この上下逆にしても成立してしまうような抽象画が、どのような経緯で実家の納屋に入り込んだのかは、祖父も祖母も他界しているのでわかりそうにない。
「どうする?」
ミヤビの問いかけに、母親が即答した。
「売ったら?」
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