高値で売れた

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 売れるかどうか気にしているのはもっぱら両親の方で、一仕事終えたミヤビは興味を示さず、旧友に再会して遊び歩き、家では自分の部屋にある漫画を懐かしがりながら読みあさる。食事では、母親の手料理に舌鼓を打つ。  そんな楽しいひとときも、一日二日三日と時間が経つにつれて仕事が気になり始め、尻がチリチリとしてきて、ここでこんな事をいつまでもやっていていいのだろうかと焦りが出て来る。慣れない長期休暇がかえって不安になり、仕事人間のスイッチが入ってしまったようだ。  都会に戻る日の朝、荷物をまとめていると、両親がスマホを手にしてニコニコしながらやってきた。 「売れたわよ」「なんか、凄いことになっているぞ」  設定した期間は7日間で、終了はまだ先なのに「売れた」はないだろうと思っていると、突き出されたスマホの画面で両親の顔が隠れた。  ――あのヘンテコな抽象画が5万円!?  高く売りたいという親の願望が心の中に入り込んできて、ゼロを1個多く数えているに違いないと疑い、もう一度「1,10,100, 1000……」と数えていくと、確かに5万である。 「へー」 「観る人には価値がある絵画だったのよ」「なんか、急に売るのが惜しくなったよな」 「壺は?」  一度母親に持って行かれたスマホが、少ししてからまた突き出される。 「これ」  ――あの、きったない壺が3万円!?  早速「次は何を売ろうかしら?」と相談し合う両親に、仕舞いには気が大きくなって捕らぬ狸の皮算用を始めないことを祈りつつ、ミヤビは家を後にした。
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