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ミヤビは、家に大学時代の親友――全員未婚――を呼んで女子会を開くことがたまにある。それぞれの会社の愚痴を言い合って発散したり、恋バナを咲かせたりするのが主な目的だ。
ここしばらくやっていないなと思っていたので、ネットオークションで絵画と花瓶を購入して一週間後にみなを誘ってみたところ、全員が快諾した。久しぶりの女子会が、戦利品のお披露目も兼ねていたのは言うまでもない。
つまみと酒を持参して押しかけた親友は、めざとく絵画と花瓶を見つける。みなの反応が気になるミヤビが、手料理を作っている最中にキッチンから彼女たちの表情を追っていると、絵画よりも花瓶の評判がいいので少しガッカリした。こうなると、絵を観る目がないと暗に言われているようなものだ。
「ミヤビさぁ。この絵なんだけど、風景画家のZの絵じゃない? サインもあるし」
昔から絵に詳しい聡子が反応を示したので、ミヤビは身を乗り出した。
「Z?」
誰それ、という言葉は慌てて飲み込む。
「その人、有名なの?」
「世間一般ではそうでもないけど、コレクターの間では有名」
有名の度合いをお金に換算する親友たちが「いくら?」「どのくらいするの?」と値段を訊きまくるので、聡子は顎に人差し指を当てて天井を見た。
「こないだ、100万で画廊に出てたよ」
部屋中に「「「100万!?」」」の声が鳴り響いた。
急に朦朧とした水彩画が札束に見えてくるから不思議である。どこにそんな価値があるのか理解できないミヤビは、エプロン姿で絵の前に立ち、そこから画家の崇高な精神とか飛び抜けた技量を見いだそうとするも、徒労に終わった。
「ねえ。テレビ番組で鑑定してもらったら?」
こういうのは、画廊とか骨董屋に持ち込んで見てもらうのが良いのかも知れないが、安く買い取るためにわざと低い値段を言うかも知れないので、ミヤビはテレビ番組の出演を本気で考えるようになっていった。
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