真夜中の訪問者たち

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 月明かりを頼りに手探りでシーリングライトのリモコンを探す。電源をつけると、そこには木崎と同じ年くらいの美女が立っていた。 「お前、何やってんだ?!」 「何? 何って、泥棒に決まってるでしょ」  木崎は目を丸くした。これほど堂々と身分を明かす泥棒なんて聞いたことがない。 「泥棒ですって言われて──はい、そうですかっ──てなるわけないだろ!」  女はバカにしたように鼻を鳴らした。 「残念ながらこの家には金はないぜ。いくら物色しても無駄だよ。一円足りともない」 「そんなわけないでしょ。せっかく侵入したからには、何かもらって帰るから」  木崎は笑いながら、「俺が今、何をしようとしてたか分かるか?」と、ベランダを指差した。「さぁね」と相手にしない女に、「夜逃げだよっ!」と叫んだ。鬼気迫るその声に、女の身体はビクッと反応した。 「俺は世界中の不幸を背負った男なんだ。詐欺に遭い、会社も倒産し、妻にも子供にも逃げられた。今の俺には何もない。さぁ、物色しろよ! 何を奪って行ったっていい。好きにしろ!」  女は同情した様子でポツリと言った。 「なんか分かんないけど、アンタ、切羽詰まってるみたいだね」
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