真夜中の訪問者たち

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「すまない。かくまってくれないか!」  叫びながら土足のまま家に侵入してきたのは、スキンヘッドの頭に白いスーツ。左肩に黒いボストンバッグを提げ、右手にはピストルを持った男。スキンヘッドの風貌が威圧感を醸し出しているが、おそらく木崎と同じくらいの年齢だろう。木崎とアスカは思わず立ち上がり、身構えた。 「ちょ、ちょっと、いきなり何ですか?」木崎の声がうわずる。 「悪い。さすがにピストルは物騒だったな。組織から逃げてきて──ちょっとだけかくまって欲しいんだ」 「まったく事情が飲み込めないね。やむを得ない事情があるなら話は別だけど」アスカが応える。 「アスカさん! ここ俺の家だぜ? こいつを受け入れるかどうかは俺が決めるって」 「どうせ夜逃げするんでしょ? だったらもう、アンタの家じゃないじゃん」木崎は──たしかに──と納得した。 「オネエちゃんがいいって言ってくれてるし、ちょっと落ち着かせてもらうよ」  男はテーブルの上にボストンバッグを置き、その脇にピストルを寝かせた。わずかにジッパーが開いたバッグの中から、大量の札束が顔を覗かせた。 「金!?」木崎が叫ぶ。 「声がデケぇよ!」男が制する。 「中には五千万入ってる」 「ご、ごせん!?」木崎とアスカは声を揃えた。 「ある企業にウチの組織が詐欺を仕掛けて、大量の金をふんだくったんだ。確か、株式会社キザキとか言ったっけなぁ──組織を抜けて悠々自適に生きたくなった俺はその金を盗んで──」  気づけば木崎はピストルを掴んでいた。震える手はしっかりとピストルを握り、銃口は男の額に向けられている。 「おいおい、どうしたんだよ?」 「俺の名前を教えてやろうか? 木崎だよ。お前らが会社も人生も無茶苦茶にした相手が、この俺だよ!」 「まさか?!」男は降参したと言いたげに、ゆっくりと両手を頭上にあげた。
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