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震える指先
「廣澤さん、今日も素敵なお花を持って来てもらって良かったですね!」
担当看護師の田中さんの含みのある笑顔に、彼は目を瞬くとベッドから起き上がった。
「本当にありがとう。夏目さんは毎日忙しいのにすまないよ」
点滴を気にしながら居住まいをただすと、彼は私に向き直り申し訳なさそうに呟いた。
「いいのよ。ここに来ることは家族にも言ってあるし。そんなことより廣澤君、検査頑張ってね」
ストレッチャーに乗せられて病室を出て行く彼に、私はおどけて手を振った。彼は照れたように左手で小さく合図をしながら、内視鏡室へと向かって行った。
私は一人残った病室で、椅子に深く腰をかけ、花瓶に生けた花を見つめながら、震える指先をぎゅっと握り締めた。
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