再会

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再会

「廣澤さん、廣澤仁さん、診察室にお入りください」  受付からその名前が聞こえてきた時、一瞬息が止まるかと思った。 ――同姓同名って事もあるし――。  この駅前のクリニックで看護師として働き始めて五年が経つ。場所柄ビジネスマンも多く、同じ名前の患者さんも時折来院する。  しかし、スーツ姿の、長身で少し猫背の男性が目に入った途端、私の胸の鼓動は激しく走り出した。  先生の丁寧な診察が終わると、最後に私は彼を採血室へと導いた。 「こちらへおかけください」  テーブルを挟んで彼と向かい合う。涼しげな目元と少し厚めの唇は昔のままだ。彼の左腕に優しく触れて、針先に全神経を集中させた。 「廣澤君、私、浦上環です。学生の頃アルバイトで一緒だった。覚えてる?」  口から心臓が飛び出しそうになったけれど、勇気を振り絞って尋ねてみた。  彼の顔がにわかに綻んだ。 「覚えてるよ。もちろん」  夏目と書かれた胸の名札にチラッと視線を移すと、彼は落ち着いた低音で答えた。 「いゃ、似てるな? とは思ったんだけど」と続けた。 「私はすぐわかった。廣澤君だって」  ――だめだ、顔が熱い──。 「驚いたな。三十年ぶりかな?」  微笑みながら長い指で採血の跡を押さえている彼から、私は目を離すことができなかった。
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