オパルの涙とチューベローズの花冠

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 人間たちが授業を受けている間、人形たちは寄宿舎の中庭で遊んでいる。煉瓦の上に白漆喰が塗られた寄宿舎の中庭は、壁が光を反射して明るく、鉱物が生る樹だけでなく、色々な草が花を咲かせている。  この庭にある樹に生る翡翠や柘榴石、オパル、その他様々な鉱物は人形たちが好きなように食べていい事になっているけれども、今はまだ花の時期だ。だから人形たちは、地面に咲く色とりどりの花を摘んで、花冠を作ったり指輪を作ったり、草笛を吹いたりそれに合わせて踊ったりして遊んで過ごしていた。  ふと、オパルのような瞳をした人形が、柘榴色の髪の人形に話し掛けた。 「私たち、今年の夏で卒業だね」  それを聞いた柘榴色の人形は少しだけ寂しそうにして返す。 「そうだね。おめでたいことなのはわかるんだけど、離ればなれになっちゃうの、寂しいね」  このふたりの出身地は遠く離れていて、そうそう会うことは出来ない距離だ。だからきっと、この寄宿舎を出たらもう会うことは出来ないと思ってしまったのだろう。  オパルの人形がにっと笑って言う。 「たまにお手紙送るから」  それを聞いて、柘榴色の人形は少しだけ微笑んだ。  人形たちが中庭で遊んでいるうちに、学校の放課を告げる鐘が鳴る。それが聞こえると、人形たちはみな嬉しそうな笑顔を浮かべて、自分の主人であり友人である少女を出迎えるために、寄宿舎の門へと移動する。  学校で静かに勉強をして疲れた少女達も、寄宿舎の門の前で待つ人形を見つけると、笑顔になって駆け寄っていく。少女達にとっても人形にとっても、お互いはどうしようもなく大切なものなのだ。
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