オパルの涙とチューベローズの花冠

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 学校から帰ってきた少女は、夕食前に濡らした布巾で体を清め、人形と一緒に机に向かう。 「今日授業でやったのはこんな感じ」 「あーん、難しい。私にわかるかなぁ」  少女とオパルの人形が言葉を交わしながらノートを見る。少女が通うこの学校では、毎日の宿題兼復習として、その日の授業で教わったことを人形に教えると言うことを生徒たちにやらせている。人形に勉強を教えるというのは、確かに効果のある学習法なのだとこの学校の学長は言っている。運悪く、この学校に来てから卒業する前に人形が寿命を迎えてしまった生徒は自分で復習するだけに留まるけれども。  少女と人形で賑やかに勉強をして、そうしている内に夕食の時間を告げる鐘が鳴り響いた。ふたりは制服と同じボルドーのゆったりした部屋着のまま部屋を出る。ひらひらとすそをなびかせながら、ランプで照らされた煉瓦造りの廊下を歩く。同じ宿舎で暮らす他の生徒と合流しながら食堂に向かうと、美味しそうな香りが漂ってきた。  夕食が終わり、白いモスリンの寝間着に着替えて寝支度を整える。少女と人形は交互にお互いの長い髪をブラシで梳いて、少女がブラシに絡まった髪を取ってゴミ箱に捨てる。そうしていると、人形は既にベッドの中に入って、少女が一緒に寝てくれるのを待っていた。 「早く寝よう? 明日も早いよ」 「うん。今行く」  人形の言葉に、少女はランプの灯を消してからベッドへと潜り込む。布団の中で少女がそっと人形の手に触れると、ひんやりとしている。暑くなってきたこの時期に、その冷感は心地よかった。
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