第一章

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中学に上がる頃に自分がサブ性だとわかって、それから義務教育の間は、国から無償で配布される飲み薬タイプの抑制剤を服用していた でもそれも中学を卒業してからは対象外となり、抑制剤のない生活を強いられた そのためバイトをしていても、発情期の間は休まなければならず、お金が溜まるどころか生活費にすぐに溶けていった それが風俗店に勤務することになった理由だった 「これ飲んで」 渡してきたのは複数の錠剤 抑制剤のない生活の辛さは十二分に理解しているから、男に抵抗するのは一旦諦めてそれを受け取った 水で一気に流し込む 拘束されていた三年間は全く縁のなかった抑制剤、副作用で吐き気や頭痛がある場合があるらしく、少し心配 それでも断然恩恵が大きく、貰えたことがありがたかった 「えらいね、じゃあ俺はもう部屋に戻るよ、晶もちゃんとベッドで寝なね、おやすみ」 「えっ、」 「ん?一緒に寝る?」 体を綺麗にされた それはいわば、今から犯すという合図だろう 「もう一緒に寝るのまで許してくれるの?」 「っ、ちがくて、」 「うんどうした?」 口を噤む この男は相変わらず微笑んでいて、俺を犯すどころか一つも乱暴しない 「…なんで、俺をここに連れてきたの」 なんのために、なぜ、俺を この男は誰? 「やっと普通に会話ができるようになってうれしいよ、最初連れてきた時なんて本当に猫ちゃんみたいにうーうー唸ってたもん」 はははなんて笑う男、蜂蜜色の目がきゅっと細くなって口角がぐいっと上に上がる 「っ、!うるさい、、」 「大丈夫、心配しないで。俺は晶を痛めつけてやろう、犯してやろうと思って連れてきたんじゃないよ」 「じゃあなんで、」 「ていうかこんなかわいい穴、犯すなんてもったいない、ずーっと眺めてるだけで満足だよ」 「っ!!!きもい!まじで無理!」 背筋がぞぞぞーっと粟立ち、思わず腹から拒絶の声が出ていた 「ははは、わかったわかった。今日はベッドで寝なね。それじゃおやすみ」 今度こそ部屋を出て行く男 俺を助けた理由、うまくはぐらかされてしまったように感じた
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