第三章

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「そんな駄々っ子晶にプレゼントがあるんだ、初リビング一緒に行ってみようか」 脇に手を差し込まれて軽々持ち上げられる 「やだ、由やだ、」 いやいや でも本当に本当に内緒だけど、正直にいうと由に抱き上げられることが好きだった 大きい掌に包まれると幼い頃に戻ったように錯覚してしまい、安心する 落ちないようにしっかり捕まれると心臓の音がトクトク聞こえる気がして心が自分の表情が柔らかくてなることがわかる 俺は決して自分から抱きついき返したりはしないけど、由は毎回「危ないから」って言って腕をまわさせる 大事にされているのかもしれない 本当に俺の勘違いじゃないのかもしれない でも由はたまたま俺を連れてきただけで誰でもよかったんだ 同じところをずっとグルグル 「いらっしゃーい」 由はたまにこうやっておちゃらけた声を出すけれど、俺を安心させようとしてくれているんだろう 初めて入ったリビングルーム ずっといる真っ白な部屋とは相反してこちらは黒をベースにしているみたいだ 黒いソファに黒いテーブル 黒いカーテンに黒い壁 「ぁっ、」 黒い、光のない、真っ暗な世界 気分が悪くなった 前いた部屋を思い出す 正確には、自分の目蓋の裏だ 目をぎゅっとつぶって耐えていた頃 最初は自分の体を傷つける手法を間近で見ていたけど、それもすぐに怖くなって目を閉じて、何も見ないで痛みだけに耐えるようになった 体に穴を開ける釘、あざを作る鈍器、肌を裂くベルト、全部見ていられるほど強くなかった だから夜は嫌いだし、暗いところは嫌いだった、真っ暗な世界で耐えていた頃を思い出すから 「晶、大丈夫大丈夫、ごめんねまだ早かったかな。黒い物もだめか」 ふわっと俺を抱きかかえたままソファに腰を下ろす
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