第三章

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「な、なに…?」 振り返ると、穴が沢山空いたダンボールからひょこっと顔を出している小さな猫だった 「晶にそっくりで、思わず連れて帰ってきちゃったんだ」 小さな瞳と目が合う 真っ白で、小さくて、まるっこい こちらに恐る恐る近寄ってくる毛玉を見るだけでその危うさに、儚さに、守ってあげたい。そう思った 真っ黒だらけの部屋のことなんて視界の外で、ただただ不安そうに鳴くその子を両手で抱きしめてあげたかった 「っ!」 弾かれたように由に視線を戻して、あそこまで連れていけと目で訴える 「ははっ、喜んでくれたみたいでよかった。立つよ、捕まってて。って、え?」 支えて立ち上がる由の首に腕を回したことに心底驚いたみたいな反応がおかしかった 「え、ちょ、晶?」 「…うるさいなぁ、いいから連れて行ってよっ、」 俺を大事だと言った由 俺を真っ白な子猫のようだと言った由 小さな子猫を大事にしたいと思った俺と、少しでも同じ気持ちを俺に持ってくれているとわかったから 少しずつだけど、半分くらいなら預けてもいいや
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