1136人が本棚に入れています
本棚に追加
第一章
「やめろ、こっちくんな!」
「晶、おいで」
「さわんな!」
さわらないで
人の手は怖いから
「こっちくんな!」
近づかないで
人間は信用できない
特に男は。
ちょっかいばかりかけてくる男、俺をここに連れてきたやつ
一目見た時に気がついたが、ドム性だろう
それも強い
何をされるかわからない
あんな生活、もうしたくない
「晶、ずっとそうしててもしょうがないでしょ」
柔らかい声
でも俺は騙されない
人間は恐ろしい
甘い蜜を鼻先垂らして引き込んで
一滴も与えずにそれを鞭へと変えてしまうのだ
「わかったよ、また夜来るからね。何かあったら隣の部屋にいるからすぐ呼ぶんだよ」
唸って睨めつけてやれば、偽善者暴君は諦めて帰ったようだ
それでもいつやつがまた来るかわからないから隠れ家を作る
といっても大きいブランケットに包まるだけだけど
それでも身の回りに何もないよりも幾分か安心することができた
最初のコメントを投稿しよう!