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第五章
雨粒は気怠げな拍手を続けている。俺にはこの程度がお似合いだ。昼間のあれが間違っていたのだ、雷のような喝采なんて。
決闘に勝てば、村の皆に重用されて、胸の底に染み付いた孤独感を拭い去れるはずだった。
そして俺は勝った。領主は願いを叶えてくれる。それなのに。
ラウリエ、なぜ決闘を買って出た? 整った装備で俺に負けるはずはないと驕ったか。名誉を求めたか。
……そうだったなら、良かったのに。
手の中で薔薇がくたびれている。数ある花の中から、彼はこれを選んで胸に挿した。そして俺と剣を合わせた。それが何を意味するか。どうしても俺には、これしか考えられない。
彼は約束を果たそうとした。村を救う手立てなら、協力しようと考えたのだ。情け心なく攻撃されれば、俺は確実に殺しにかかると知っていただろう? ほかでもない、君に教わったのだから。
友情は壊れたと思っていたのに、違ったのだ。優しい母はどうした。跡取りとしての務めは?
擲ったのか。俺との約束のために。
ああ、領主に何を願おう。塩の値下げ? この村の分だけなら許されるかもしれない。しかしそれでは、ほかの領民から反感を買う。揉め事になれば、別の損失を生みかねない。物々交換禁止の撤回が妥当か。物の価値が安定せず、商人には面倒だろうが、村としては両替手数料の負担を考えれば充分……。
だがしかし、彼の命に見合うものにしなくてはならないのだ。そうでないと俺は俺を、ラウリエの友と認められない。今やそれが一番、俺を孤独たらしめるように思えた。
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