第四章

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 喝采を受けて、我に返った。衛兵が来て転がった剣を取り、花など添えて俺に差し出す。見れば試合前、相手が持ち物を預けていた兵士だ。   「栄えある勝者に。よければ貴方の剣を、彼のためにいただけませんか。彼が立派に戦った証として」  曲がった剣を恭しく受け取ると、衛兵はそれを亡骸に抱かせて布をかける。そこで領主が舞台へ上がってきた。興奮した面持ち。手には小さな箱がある。   「素晴らしかった。この箱は、敗れた彼からだ。こうした結果になったら渡すよう頼まれていた。舶来の高価な薬で、砂糖という。戦いの疲れを癒してほしいとのことだ。良薬だが苦くない、こんな味はほかにはないぞ」 「……ありがたく。領主様、彼の名はなんと」 「彼は謙遜して、秘密にしたがった。しかし私は、それは惜しいことだと思う」  領主は亡骸に視線を落としてから、群衆へと声を張り上げた。   「勝者リヴィエールと――誇り持ちて戦った我が兵、ラウリエを称えよう!」
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