第6章

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老人は、ハルナの小鳥のさえずりのような微笑みと可憐な声に安堵しました。 おはよう ハルナさん やっぱり来てくれたんだね ……… こんな薄汚い老いぼれのために 誠に申し訳ない 本当にありがとう ……… 老人は、ビル群の隙間から覗く朝陽に照らされながら深々と頭を下げました。 するとハルナは、小さな胸に(かか)えていた大きなスケッチブックを老人の前に広げて微笑みます。 おじいさん 画用紙にピアノの鍵盤を描きました ……… 今日はこの鍵盤で この間のようにピアノを弾いてください ……… わたしがおじいさんの演奏に合わせて 得意のハーモニカを吹きますから ……… 老人は驚きました。 このマリア様のような少女は、こんな薄汚い老いぼれのために、画用紙にピアノの鍵盤を描いてくれた、こんな世の中から見捨てられた老いぼれた浮浪者のために…
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