第6章

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老人は、ハルナから画用紙に描かれたピアノの鍵盤を受け取り、目の前の小さな段差の上に置きました。 目頭が熱くなり、声を詰まらせながら何度も何度も頭を下げました。 ありがとう ありがとう ハルナさん ……… そんな老人の姿を見て、ハルナもこみ上げて来るものがありましたが、ここからが本番だと気を取りなおし元気よく演奏を(うなが)しました。 さあ おじいさん 準備はいいですか? ……… もちろん曲目は ベートーヴェンのピアノソナタ第8番 「悲愴」第2楽章です ……… 見慣れたビル群が朝陽に反射して、さまざまな方向へ光が派生し、その光から飛び出した小鳥たちのさえずりが聞こえます。 老人はゆっくりと頷き、画用紙に描かれたピアノの鍵盤に年老いた細い指を(そろ)え、ハルナに向かってさらに大きく頭を下げて合図を送りました。 身体をゆっくりと左右に振りながら、皺の多い指が画用紙の鍵盤を踊り始めます。 そしてハルナもそのピアノ演奏に合わせて、ミモレ丈の少しふんわりした白いスカートを靡かせながらハーモニカを吹き始めました。 🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵 🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵 🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵 🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵🎵 ………
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