1 修道女志願

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1 修道女志願

――いいえ、シスター。   わたしの決意について、ご心配になる必要などないのです。心はすでに、定まっております。 1 親愛なるシスター・オルランド ダチェットはもうすっかり春の匂いでいっぱいです。 いま小さな蝶が、中庭のサンザシの若葉に舞い降りました。 シスターの暖かな御導きにより、つらい冬を乗り越えることができたこと、深く深く感謝しております。わたしの心を苛んでいたつらい冬を。 この春の陽に輝く庭のように、いまは、わたしの心も明るく照らされております。 シスターと同じ道を歩むのだという希望を得て。 いいえ、シスター。 わたしの決意について、ご心配になる必要などないのです。心はすでに、定まっております。 修道院での厳しい修練を耐え抜く力が、わたしの身体にはないのではとお尋ねでしたね。どうかそのことも、ご心配なさらないでください。 この冬、わたしは大変健やかに過ごすことができました。 シスターのお導きにより、これまでより一層、強い信仰をもつことができたからに相違ありません。 これからも、ただひたすらに天のお父様と主イエス・キリストにお仕えするならば、わたしの弱い心だけでなく、この身体も、きっともっと丈夫になりましょう。 ですから、どうかシスター・オルランド。 わたしの誓願が聞きとどけられますよう、お力添えください。 敬愛するイエスさまとあなたの小さき羊 リルより ユージニア・リリアン・スタンレーは、ペンを置き、書き終えたばかりの手紙の署名の上に、そっと吸取器(ブロッター)を乗せた。 ……お嬢様。 レディ・ユージニア。 ドアの外で呼ばわる声に不意をつかれ、リルが思わず飛びあがりそうになる。 あわてて手紙を揃えて、ドアへと向かった。 「伯爵夫人(奥様)がお呼びです。テラスで午後のお茶をご一緒にと」 メイドの言葉に、リルが静かに頷く。 小さく膝を折ってリルに挨拶をすると、メイドはすぐに、その場を下がって行った。
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