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最後の一段を上りきると、見慣れた大きな神社が見えた。毎年初詣をしに来る以外で来るのは初めてで、全然人がいないのがその時と違っていて、どきどきした。
神社に歩いて行きながらきょろきょろして、周りにおじさんや、おみくじやお守りを売っているお姉さんたちがいないかチェックする。
し-んとしていて、初詣のときにお姉さんたちがいる場所も閉まっている。
よし、最初のミッション、クリア。
歩いて、神社の前にたどり着く。
階段を三段上がると、両手を思いっきり広げても勝てないくらいの大きな箱がある。いつも初詣で、お金を投げて入れる箱。ここからお金を持って帰るのが、今日の僕の作戦だ。
胸がまたぐんっと重くなって、心臓がどきどきしてきた。
僕はそっと、箱の中に手を入れた。表面にある何本もの木のせいで、片手を入れるのもやっとだ。
腕が何とか入った。と思ったら、手が全然先に入らない。二枚の木の板みたいなのがあって、ほんの小さな隙間しか空いていないのだ。指は何とか入ったけど、どうしてもそこからが入りそうにない。
すうっと、背中が冷たくなったような感じがした。
どうしよう。
腕を箱から抜いて、僕は箱の前に座り込んだ。
あとはそっと箱からお金を出して、逃げればいいと思っていたのに。
どうしよう、どうしよう。急がなきゃ、人が来ちゃうかもしれない。
でも頭がぐるぐるして、全然いい考えが出てこない。
風でカサカサ気が揺れる音が、全部足音に聞こえて心臓がバクバクした。
そうか、箱を倒しちゃえばいいんだ、
ふとひらめいた。
誰か来ちゃうかな。ううん、頑張って走って逃げたら大丈夫。
ぐっと立ち上がって、力いっぱい箱を倒そうとした。
でも、箱は全然びくともしない。えいっと思いっきり引っ張っても、手が痛くなるだけだった。心臓がまたバクバクしてきた。
どうしよう、動け動け、早くしなきゃ、早く、早く——
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