4人が本棚に入れています
本棚に追加
相談
親友が、僕に相談を持ち掛けてきたのは、丁度一週間前だった。
木造アパートの二階の角部屋。
大学卒業後、就職してからずっと暮らしている6畳のワンルームで、麦茶を傾けながら僕らは二人、差し向かいで座っていた。
「せっかくの休日だってのに、こんなトコ来てていいのか。新婚さん」
つい最近結婚式を終えて、妻帯者となった親友に僕はおどけて言った。
僕らの関係の始まりは、子供時代まで遡り、腐れ縁も腐れ縁。
壊死寸前まで腐れてる縁ではあるけど、親友の結婚を機に付き合いも減ると思っていたのだけど、何故か今も昔と同じようにこうしてダラダラと二人で話している。
僕の言葉に親友は少し複雑な表情を浮かべた。
「いいんだよ。今日はおふくろ来てるし、女同士の会話に男は邪魔にしかなんねえし」
「せっかくの新築新居なのに、追い出されてんのか。
逆玉の入り婿は立場が弱いねえ」
「うっせーな。そんなの承知の上でこっちは結婚したんだから、いいんだよ」
「でも、良かったじゃねえか。
おばさんと嫁さん上手くいってるみたいだし」
「……」
女手一つで自分を育ててくれた母親に、楽をさせてやりたい。
常々そう言っていた親友の夢は、ほぼ叶ったようだった。
若いころは、僕も親友もやんちゃをしたこともあったけど、それも昔のこと。
今は二人ともきっちり就職して働いている。
親友は、取引先の会社の常務の娘と先日逆玉結婚。
相手の親の金で、新築の家を建てて、しかも懸念されていた嫁姑問題もなし。
順風満帆と言ってもいいだろう。
なのに、目の前の親友は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「それがな。おふくろの奴、なんか変なんだよ」
「変?」
「ああ、今日はそのことを相談したくてここに来たんだ。
こんなん相談できるの、お前くらいしかいなくてよ」
眉をへの字に曲げて、親友は言った。
麦茶のコップに浮かんだ水滴が、一しずくテーブルに垂れる。
僕は先を促した。
親友の話はこうだった。
最初のコメントを投稿しよう!