光は虹色

　凛々子は明るく笑った。新卒で銀行に一般職で就職した凛々子だが、半年も経たずに信用金庫へ転職してしまった。一年か二年経ったら辞めるかもと話していただけに、いつかは訪れる瞬間だと思っていたが、その変わり身の早さにはさすがに驚かされた。

「思い切ったことするよね。そんなに銀行が嫌だったの？」

　以前会った時、職場や同僚、先輩たちに対する不満を並べていたのは覚えている。それが理由であることを否定しなかった凛々子は、もっと働きたいと、目を輝かせて言う。

「今勤めてるところ、規模は小さいけど総合職で入れたから。やっぱりそっちの方がやりがいあると思って」

　新卒で入った会社を半年で見限ったことになるが、自分の意志で決めたためか、未練がましい様子はなかった。

「美也子だって、異動したんでしょ。二ヶ月しか経ってないところで。よく決断したよね」
「わたしのは、別に自分で決めたわけじゃないし……」

　仕事に優劣などあるはずはないが、妙に垢抜けてしまった凛々子を見ていると、どうしても引け目を感じてしまう。主体的に道を選んだ凛々子と、受け身の自分の間には差があるだろう。

　美也子の思いに気づいた様子もなく、凛々子は興味の赴くままに話を進めていく。こうやって好奇心に正直なところは、大人になろうと仕事をしようと変わりない。それに少し安心して、美也子も異動後の話をしていった。

「まあ、悪くないかな」

　不満や不安はついて回るが、特養の時ほど辞めたいとは思わなくなった。凛々子と同じように、合わない職場から脱出したからかもしれない。そうだとすれば愛智に感謝しなければならないが、素直になるのは憚られた。

「どういう人と働いてるの？」

　そう訊かれて、思い浮かんだ言葉があった。

「好々爺と残念イケメンとクズ野郎」