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ひと泳ぎしたあとは、畳の部屋でお腹を冷やさないようにタオルケットを心持ちかけて眠る。部屋の隅にある日本人形のガラスケースが光っている。かすかに風鈴の音がする。エアコンはなくて、ちょっと暑いな、でももう少しこのままでいたいなと思いながらうとうとする。遠くから母と祖母の話し声が聞こえてくる。「あの子はまだ寝てる」とかなんとか。ああ、私のことか。
夏休みのあいだ、幾度となく繰り返されたのは、あわいのような時間だった。
アッパッパを着てほがらかに笑っていた祖母は亡くなり、私は京都、東京、千葉と住まいを変え、実家に帰るのはせいぜい年に二、三回だ。競うように肌を焼くことももうない。
あのタオルケットはどこにいったのだろう。
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