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最初に会った時には五歳だと言っていた。王家の跡取りで双子の忌み子。
五歳まで育てて優秀な方を残す。それは昔から『人』を統べる王と呼ばれる『人』が行ってきた「悪行」。
魔の森に捨てられたその子は、自分が親に何をされたのか分かっているのか、泣きもせず只管に歩いていた。
暇つぶしに森へ出て、赤いチャロの実がなる木の上でチャロの実を食べていた時にそれを見つけた。
丁度私の下で魔物に襲われているのに、それは目を閉じてその事を享受しようとしていた。面白かった。人は己が死ぬ間際には泣き叫び他を呪うと聞いていたから。
だから私はそれを持ち帰った。ただの気まぐれだったけど、私の側近が時代は違えど各々お気に入りの『人』を手に入れ仲睦まじくしているのを見ていたから。私とそれもそうなればいいと思いながら。
セイロと名乗ったそれをそばに置き大切に育て、血を与え、パムの実はセイロのお気に入りの果物になった。セイロが二十歳になった時には体を繋いだ。精を注げばより魔に近い者になるのは知っていたから。
それなのにセイロは病に負けた。ディブィのお気に入りと違って『人』に襲われたわけじゃないから私は壊れずに済んだ。魔になって魔物特有の病に弱っていく様を見届け、何度か私と同じになれと言った。このまま死なせるのは嫌だと思ったのだ。だがセイロは「次に会えた時に。それはもう運命だから、その時に」と言ってこの世を去った。たしか二十五の歳だった。
それから何度かセイロは生まれた。セイロの魂は『人』の『神』とやらに嫌われていたのだろう。生まれ変わっても幸せではなかったようだ。私と時を同じくしたのはセイロの時だけだったが名を変えてもセイロは捨てられたり殺されたりしていたとエルフが言っていた。いつも二十五を超えることはなかったと聞いた。
だから、セイロの言う「次」が来たら有無を言わさずこちらに落とす事を決めたのだ。
ディブィが連れてきたのは偶然だったが、それもまた運命だと思った。
もう離さないと決めた。私は魔王でこの世の全てを手に入れることが出来る。
セイロ一人手に入れられないなんて、そんな事はありえないのだから。
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