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セイロの魂はシルベールとなって私の所へ戻ってきてくれた。セイロとは違い物言いはハッキリしてるし言いたい事だって、魔王である私にも遠慮がない。
それはそれで嬉しかった。
『あんたも生きてるんだなぁ』
私の髪を何度も洗いながら呟いたのはシルベールだ。汚い臭いと言いながら。
『生きるって大変なんだ。めんどくさい事もやらなきゃならんし』
私が散らかした部屋を文句タラタラ片付けたのもシルベールだ。
『魔王のクセに眠くなるのか!』
魔王でも魔族でも、魔物だって疲れれば眠ると言えばふぇぇと感心したような顔をした。
ふと、可愛いと思ったのだ。セイロの時には一度たりとも思った事はなかったのに。
パムの実を食べた時には驚いた。あれを使って魔の物になってしまったら、私でさえ作り直すのは難しい。魔の物にだって寿命はあるのだ。ただ、『人』と『魔』では作り替えるのに工程がひと手間もふた手間も違う。一度魂を取り出してからとなり、取り出した魂がフラフラと人の言う『神』の元へと導かれる。そうなると私でも手は出せなくなる。
人の『神』は、魔に落ちた魂が好物なのだ。早い段階で目をつけられ、今か今かと手ぐすねを引いて待っているのだ。
ただ、シルベールの食べた量であれば心配はなかった。二日三日で体の中から排出されるだろうと思えた。
『あんたの食べ方って召し上がるってより食らいつくって感じだな』
パムの実を食べる私の正面で、にこやかに笑いながら同じように果物を食べるシルベールは幸せそうだった。
レヴィに勇者の動向を探らせていたら、シルベールが『なんでそんなに王都の事を知ってるんだ』と聞くから、マルティナが闇に隠れて情報を持ってきて、精査した後レヴィが必要な情報を持ってくるのだと教えた。
『あんたの部下があんたの情報源か。でも俺の情報源はあんたなんだけど・・・ってことはあんたは俺の部下じゃん』
ケラケラと笑うシルベールに『そうかもな』とは応えたが、魔王である私を部下などと言えるのはシルベールくらいだと驚いたものだ。
『あんたでも驚く事があるんだねぇ』
ふふっと笑うその顔が、あまりにもキレイな笑顔でそれにもまた驚いた。
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