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その日も僕は夢を見た。ソラマメの上に乗って、ガスコンロの上を飛び、ベラルーシまで行ってゴムバンドが入ったコップの水を飲み干す。なんの役に立たない、夏炉冬扇の記憶だった。最近は本が与える架空の世界に入り浸ったせいか、夢を良くみるようになった。僕は夢のことを疎ましく思っていた。目覚めが悪くなるだけで、何も与えてはくれない。
案の状、カラオケ屋のバイトは落とされた。僕は落ち込むまでもなく、いつも通り学校に行って授業を受けていた。しかし、次の手を考えなくてはいけなかった。下半期の学費納入期限が迫っている。
こんな社会不適合者な僕が、普通に社会でバイトをするなんて不可能なことなのかもしれない。その夜、そう思った僕が検索をはじめたのは、怪しいネットビジネスだった。1日で十万円、なんていかにも怪しげな文言が並ぶ。こういうのって、怖い人たちが裏にいるんだろな。僕が怖気づいてページを閉じようとしたとき、黄色の字で書かれた派手な広告のポップが目についた。
『自宅でできる簡単な副業! 誰にも会う必要はありません』
興味本位でタップすると、信じられないことが書いてあった。
『夢をよく見る方必見。“夢”をシェアして月収100万円。夢のサブスク【Zzz】』
「……夢のサブスク?」
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