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使えないやつ呼ばわりは、今に始まったことではない。小学校の体育で、二人一組を組むとなると、僕はいつも余り者になった。中学の修学旅行の班決めでは、僕の押し付け合いが始まり、高校の文化祭では、僕を追い出すように仕事の奪い合いが始まった。もともと会話が苦手だったのに加え、不器用な僕は何をしようにも失敗して、みんなから顰蹙を買った。修学旅行では迷子になって班長を困らせ、文化祭では前日に模擬店の看板に絵の具をかけてしまって、クラスから大ブーイングの嵐。無口で何の取り柄もない僕は、いつからか影で「お荷物」と呼ばれるようになった。
家に帰る足取りが重い。進学先に東京の新興私大を選んだのは、上京すれば高校までの同級生と会わなくても済むと思ったからだ。経済学部と芸術学部があり、僕のいる経済学部は願書さえ出せば誰でも入れる学校だった。私立の高い学費は、実家の祖父母がすべて出してくれるはずだった。
キャバクラのキャッチですら、僕に声をかけない。疲れた顔で歩いていると、携帯が鳴った。母親からだ。
『バイト受かった?』
「まだ、わからない。とりあえず4つ受けた」
『受かってるといいわね。結果出たら、すぐ教えてね』
僕の気を立てないように、わざと浮いた声で言ってる。
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