好きって言って、マイダーリン!

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「う、くうっ……!」  うまく息が出来ない。呼吸をするだけで、ほんのわずかな振動だけで感じてしまって辛い。  同じ大学に通う陽介(ようすけ)と付き合うようになってから、一年。私の方がその――恥ずかしい話だがなかなかの“寂しがり屋”であったということもあって、彼と体を繋げる頻度は相当高い方ではあるのだが。彼が一番求めていることが何なのか分かっているのに、どうしてもたった一言が言えずに詰まってしまうのである。そう。  本当はもっと、激しくシテ欲しいのに。  そうやって焦らされれば焦らされるほど、お互い辛いと分かっているのに。 「ねえ、美咲(みさき)先輩」  一つ年下の、可愛い顔した恋人は。私と違ってまだまだ余裕そうな表情で、おねだりするように私の顔を見上げてくる。彼の身長がさほど高くないというのもあるが、私が彼の膝に乗っかっている姿勢だからというのが大きい。顔を見てやりたい、と言い出したのは彼の方だった。私は恥ずかしいので、後ろからでも全然良かったし――こう、対面座位ともなると全体重が彼にのっかることになるので、重くないか非常に心配ではあったのだけど。 「いい加減、聞かせてくれませんか」 「あっ」 「淋しいです、俺も」  ほんの少し、腰を揺さぶられただけで――間抜けな声が出てしまう。入れられたまま、動いて貰えないのがよもやこんなにも辛いとは。一番感じる奥にがつんと食い込んだまま、じりじりと熱だけがお腹から全身に広がっていく。お腹すいた、もっと食べたいのに――と恥ずかしい場所はびしょ濡れでとっくに酷い有様だというのに。 「好きって、言って欲しいです。ダメですか、先輩。でないと……ずっと、このまんまですよ?俺より先輩の方がずっと余裕ないと思うんですけど。だってほら、さっきからずーっと……きゅんきゅんしてる」 「ば、ばかやろっ……言うんじゃねー、っての……!」  ああ、もう、馬鹿なのは私だ。  たった一言言うだけでいいのに。こんなに体は素直なのに、どうして言葉が出ないのだろう。しかも、代わりに飛び出してくるのは女らしさの欠片もない悪態ばかりときている。 ――もう、私の馬鹿野郎!……陽介に、こんな顔させてんじゃねーてのっ!  現実で、ツンデレなんてもの流行るはずがない。あれはあくまで、アニメやゲームだからいいのであって。現実の女があんなもの演じたら、ただのウザいだけだとわかっているのに。  残念ながら、私はその“ガチ”のツンデレというやつらしい。  こんなに彼しか見えていないのに――行為の時でさえ、一番大事な言葉が言えずにいるのだから。
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