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未来からの贈り物
あたしは100年後の未来で暮らしている16歳の女の子。
今日は、100年前のみんなに、家で眠っているものを出品したよ。
「3歳の時に、七五三で着た振袖です。
一度着用した後、自宅にて保管していました。
海のイラストが描かれた、爽やかな振袖です」
出品文は、これで良いかな?
大事な振袖、売るのはもったいない気もするけど、もう着ることはないもんね。それだったら、必要な誰かに譲ってあげよう。
「わたしの娘の七五三に、ピッタリの振袖を探していました。
もしよろしければ、こちらの振袖を譲って頂けませんか?」
やったあ。早速、購入希望のコメントが来た。
文章を見た感じ、小さな娘がいるお母さんかな?
愛情深そうな人。この人に、譲ってあげたいなあ。
「息子の七五三で、必要な振袖を探しています。
わたしも、購入希望です」
と思ったら、別の男の人からも、購入希望のコメントが。
こちらは、小さな男の子がいるお父さんかな?
温厚そうな人。どうしようかなあ。どっちにも振袖を譲ってあげたいけれど、
大事な振袖は、目の前に一着だけ。
「こういう時は、相手がどんな人か見て決めよう」
迷った末に、購入希望の人の商品ページを見ることにした。
まずは、お母さんのほうから。
子供用のピンク色の洋服に、小さな靴下。なるほど、愛らしい女の子がいるのね。
あ、大人用の振袖も出品してる。同じ海のイラストだ。とても綺麗。
あれ?よーく見たら、袖口に、小さく名前が書いてある。
未令和子。未令。あたしの苗字と一緒だ。
「この人は、ひょっとして・・・」
あたしの苗字は、日本でも一つか二つしかない、珍しい苗字だ。
となると、この人は、わたしの孫かひ孫である可能性が高い。
「ま、まさかね。そんなわけ・・・お父さんのほうも見てみよう」
次に、お父さんの商品ページを見た。
釣り用の釣り竿セットに、子供用の青い服。
こちらは、ちょっとお父さんの趣味が垣間見れるけど、
でも、子供を愛する気持ちは、お母さんと変わらない。
あ、大人用の着物も出品してる。龍のイラストが描かれてる。カッコイイ。
あれ?よーく見たら、袖口に、小さく名前が書いてある。
未令周作。 また、あたしの苗字と一緒。
「この人も、ひょっとして・・・」
どちらも、わたしと血が繋がっている?
そう思うと、胸がドキドキした。
もしあたしが、この振袖を発送したら、100年前の孫かひ孫が、
あたしが3歳の時に着ていた振袖を着るんだ。
なんだか、不思議な感じ・・・。
「そういえば、髪飾りもあるんだった」
振袖の中から、サクラの髪飾りが出てきた。
お母さんには髪飾りを、お父さんには振袖を送ってあげたい。
ふと、そんなことを考えた。
「髪飾りもあります。良かったらどうですか?」
早速写真を撮って、出品した。
すると、またお母さんからコメントが届いた。
「素敵な髪飾りね。こちらをひとつください。
振袖は、他の人からもらいます。もうひとりの方に譲ってあげてください」
「分かりました」
メッセージを送り、発送準備を始めた。
透明な袋に入れて、プチプチで包んで。
無事届きますようにと、願いを込めて。
「譲って頂き、ありがとうございます。息子も、とっても喜ぶと思います。
到着を楽しみにしています」
数分後、お父さんからもメッセージが届いた。
あたしはすぐに振袖を折りたたみ、透明な袋に入れて段ボール箱へと入れた。
「郵便局員さん、これふたつ。
どうか過去に届けてくださいっ!」
あたしが送った、100年未来の振袖。
無事100年前の愛する人たちへ届くかな?
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