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母はカレーをお皿によそい、テンが食卓へ並べる。
そして3人分並び終え、テンと母も椅子に座った。
「お父様、どうかしたの?」
テンが父の少し悲しそうな顔を覗き込みながら再び聞いた。
そして父のその目がテンを見つめ、そっと口を開いた。
「テン、お前はあの森に行ってみたいと思うかい?」
「え?」
もちろん、あの森というのは、例の『バケモノ』がいると言われている森のことだ。
そんなことはすぐわかったが、どうして父がそんなことをテンに聞いたのかは分からなかった。
「いや、いかんいかん。なんでもない、さあ今日もおいしそうなカレーをいただくとしよう」
打って変わっていつもの様に気丈にふるまう父。
母も納得はいかないようだったけれど、これ以上聞いてもきっと父はうまく話をはぐらかすだろうと思ったのか、何も言わず「いただきます」とカレーを食べ始めた。
もちろん、テンも納得はしていなかったが、二人のそんな空気を感じ取ってしまえば、何も言えなかった。
ただ意に反して、カレーとミルクはやはりとてもおいしかった。
食事を終えて、テンは自分の部屋に向かった。
どうしてもあの父の顔に納得がいくわけもなく、ベッドの上で右に左にゴロゴロと転がりまわっていた。
「お父様が急にあんなことを聞いてくるなんて絶対おかしいわ。森に行ってみたいかって・・・」
恐ろしいバケモノが居るのもわかってはいる。
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