第3章 誘い

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第3章 誘い

朱里は、自分の“口”には自信がある。 口と言っても、ご奉仕ではない。 いや勿論、夜の仕事を続けている以上、ご奉仕についても一般女性よりは上手な自信はあるが。 トークの方だ。 自慢ではないが、朱里はそこそこの大学を出ている。教養だって年の割には豊かだと自負している。 さらには、街頭営業で鍛えたトーク術。 今日のお客さんは、最高だった。 本の趣味が完全に一致していたのだ。 会話には花が咲き、大いに盛り上がり、結果ベッドに入ることなくアラームが鳴った。 これも朱里の策略だった。 が、流石に服も脱がず、ベッドにも入らないのはやりすぎな気がしないでもない。 「時間になっちゃったんですけど、少しプレイしますか?」 「いいよ。なんかそういう気分じゃなくなっちゃったし。今日は思いがけず楽しかった。次は普通に昼間に会いたいね……なんて」 そう言って、30代後半くらいに見えるメガネの男性は、笑った。
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