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軍隊のごとく忠誠心の強い社員たちは、当然生活費の申請などできるわけはなく、朱里も家賃分の3万円だけを申請するにとどめた。
食費や交通費、水道光熱費は自分で何とかしよう。
同期たちは、それぞれ親へ支援を頼んだようだ。
会社の同期たちと共同生活を営むシェアハウスへは、お米やインスタント食品が届くこともしばしば。
ただ、朱里には頼れる人がいなかった。
そもそも、頼ろう、という気持ちが微塵もないのだ。
昔から、自分でなんとかしてきた。
決断に悩んだことも、迷ったこともない。
人生とは自分でなんとかするものだ。
大手企業の内定を土壇場で辞退することも、
新卒で今の会社へ入社することも、迷わず即決したし、
そのことで親から勘当された日も、淡々と家出の準備をしてキャリーバック一つで実家をあとにした。
朱里はそうやって淡々と、颯爽と生きてきたのだ。
仕事は、週7日。朝8時半~夜22時頃まで。
他で稼ぐためには、皆が寝る夜しかなかった。
お金がない。
それなら、稼ぐしかない。
それが、どんな手段であっても。
お金が手に入るなら構わない。
自分の身体を売って、それでお金がもらえるなら、充分ではないか。
夜の世界へ足を踏み入れることに、朱里は全く抵抗がなかった。
会社に迷惑をかけるくらいなら、自分の身を削ったほうがよっぽどマシだったのだ。
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