第3章 誘い

4/8
前へ
/81ページ
次へ
「戻りました」 「めぐちゃん、お疲れさま」 朱里はスタッフへ、お代の入った封筒を手渡す。 「めぐちゃん、今日ってもう一人いける? 指名で90分希望のお客さんがいるんだけど」 「え、リピーターですか?」 「いや、初めてのお客さん。うちのお店自体初めてだからどんな人かわからないんだけど。家が近くみたいで、デリバリー希望。できれば早い時間が良いみたいだから、もし大丈夫そうなら準備お願いしても良い?」 朱里は、一瞬考えた。 勿論お給料が倍になることは嬉しい。 しかし、仮眠もせず昼の仕事へ出社することは身体に大きな負担を強いる。以前同じように、夜に二人のお客さんを相手してそのまま出社したときには、昼に立っていても眠れてしまうくらいの眠気に襲われ、夜のアポタイムでは電話をしながら寝てしまい、上司から激しい叱責を受けたのだ。 以来、一日にふたりの相手をすることは避けていた。 しかし、指名ならば仕方ない。 「わかりました」 それに、先程はトークだけで体力を消耗していないので、なんとかなるかもしれない。 朱里は控室に戻り簡単にメイクを直すと、準備できました、とスタッフさんへ告げた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

117人が本棚に入れています
本棚に追加