117人が本棚に入れています
本棚に追加
――その時。
不意にシャワーの音が止まった。
朱里はどきりとして、慌てて手を引っ込める。
シャワールームの扉が開いた。
バスタオルを手にして、身体を拭いているのは、先程初めて顔をあわせた、どこの誰ともわからない中年のおじさん。
心臓がせわしなく鼓動を早めて、朱里は慌てた。
――私は、何をしようとしていたの……?
自分が取ろうとしていた行動を思い起こし、愕然とする。
盗もうとした?
人様の財布から、お金を盗ろうとしたのか?
私は、悪いことをしようとした。
罪を犯そうとしたんだ。
ああ……、私はどこまで落ちていくんだろう。
最初のコメントを投稿しよう!