第1章 1万円

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「おまたせ、シャワーどうぞ」 どうみても普通の、細身の中年おじさんが腰にタオルを巻いて向かってくる。 「ありがとうございます」 朱里はお客さんに背を向けると、恥じらうことなく服を脱いだ。脱いだ服は丁寧にたたみ、ソファへ置く。ついで下着を外して、服の上に重ねた。 そのスレンダーな裸体を、中年おじさんが後ろで眺め回していることに朱里は気づかない。 小振りな胸ゆえに、身体に自信のない朱里だが、男にとってその肢体は十分魅力的である。 見事なくびれ。それに反比例したハリのあるお尻と太もも。 本来このような場所にいるはずでないとひと目で分かる、正しい姿勢。 その見事なストレートラインを歪めたいと、多くの男が夢中になっていることを朱里は知らない。 顔も良い。 ハッキリした眉毛と瞳が印象的な小顔。 歳は20代の中頃か、もう少し上か? 夜の世界に珍しい黒髪は、しとやかさと真面目な性格を現していた。 朱里の魅力はなんといってもそのギャップにある。 どう見ても、きちんとした職につき、真面目に働き、一定のお給料をもらっている、“昼の女”そのものである。 それがなぜこんなところに? そのギャップが多くの男を虜にするのだった。
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