第1章 1万円

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アラームが鳴った。 ――やばい! 朱里は、咄嗟に身を起こしてベッドを飛び降りてアラームを止める。 「…すみません、まだイッてないですよね?」 「大丈夫だよ。もう時間だよね」 「あと15分です」 「じゃ、シャワー浴びてくるね」 私は慌てて、お客さんのバスタオルを探し、手渡す。 「ああ、ありがとう」 ウトウトしてしまった自分を反省しながら、ふと机を見ると、焦げ茶色の革財布が、変わらず放置されている。 お金を盗ろうとは、もう、思わなかった。
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