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何とか間に合った!
家からダッシュでオフィスへ駆け込むと、
「おはようございます!」
と扉の前で大きく挨拶する。そして朱里はさっと全体を見回した。
よかった、社長はまだ来ていない。
時刻は、8時25分。朝礼開始5分前。
班の上司へ慌てて挨拶をし、デスクへ向かい荷物を下ろすと、日報提出と朝礼準備を済ませた。
ちょうどそのとき、社長が出社した。
「おはよう」
胸を張り、大股でオフィスを闊歩する社長へ
「おはようございます!!」
と、社員全員が深く頭を下げ、勢いよく挨拶を返す。
そうして朝礼が始まった。
朝礼は、社歌の斉唱、理念の唱和から始まる。
その後、社長の説教が続き、最後に各人が今日の目標を叫び、士気が高まったところでお開きとなる。
昨今、営業不振の我が社において、朱里はこの朝礼ほど嫌なものはなかった。
社長の説教は、
なぜ私たちの営業成績が上がらないのか。
それは私たち社員の気持ちが足りていないから。
数字は嘘をつかない。
そして、私たち社員が如何に駄目人間であるか。
という話題に終始し、それを社員全員が真に受ける。
そうだ私たちはもっと努力しなければならない。
私たちの力が足りていないことが営業不振の最たる原因。
私たちこそ悪の根源。
もっと頑張らなければ!
もっと必死に仕事をしなければ!
そう思わずにはいられない空気感。
ご多分に漏れず、素直で責任感の強い朱里も、そのように強く洗脳され、自分を責めることで、なんとかモチベーションを維持するのだ。
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