ピンク

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ピンク

ピンクは微笑みを絶やさず待っていた。 約束の時間だ。 そろそろ男どもが私のために金を持ってやってくる。 そこへ、強盗してきた仲間が1人で車に乗り込んできた。 「おつかれっ!って、他の2人は?」 「やられた。でも、金はちゃんとある」 「え?マジで?とりあえず、逃げるよ」 と、助手席の仲間に缶コーヒーを渡し、急いで車を発進させる。 でも、アタシは一般人の振りをしているから派手な運転はしない。 銀行が襲われてすぐだから、まだ、検問はされていない。 今のうちに、出来るだけ遠くに逃げる。 向かうのは、南。 メキシコとの国境まで行って、国境を突破する。 メキシコで金を隠し口座に入金する。 後は、空路でヨーロッパまで行ったら解散。 4人それぞれ、好きな所で暮らす。 って、いうのが計画だった。 4人で来るはずが、2人になって計画とは違くなったけど、今は、とりあえず山の中のちょっとした空き地に車を止めて休んでいる。 ここは、車の乗り換え地点だ。 同じ車で逃げ続けると捕まるリスクが高まるから、途中で車を乗り換えながら目立たないように逃走する。 この車も事前にブルーが用意しておいたものだ。 もう一つ計画と違うことがある。 助手席に座っているこの男が、死んでいるという事。 アタシが用意しておいた毒入り缶コーヒーを飲んだからね。 缶だから毒なんて入ってないって思っていたのか、アタシが毒を盛るなんて思ってもみなかったのか。 あっさり飲んで、あっさり死んだ。 一応、毒入り缶コーヒーは3本用意したんだけど、1本で足りたね。 だって、実行犯の男3人に仲間割れするように仕向けていたからね。 3人がアタシに好意を持っていたのは分かっていたし、あとは、他の2人がいない時を狙って、それとなく誘えばよかった。 この車にアタシの痕跡は残さない方がいい。 指先にはマニキュアを塗って指紋が付かないようにしている。 アタシには前科はないから、指紋が残っても平気だけど、用心に越したことはない。 変装用のウィッグの中に被るネットも隙間の無いものにして、自分の髪の毛が落ちないようにしてある。 銀行強盗が助手席で自殺しているのは不自然だし、強奪した金もないし、他殺を疑われるかもしれないけど、そこから、アタシに辿りつく前にヨーロッパに渡っちゃうしね。 さすがに、この計画も2回目ともなると慣れたもんだよね。 アメリカ東部でやった時は、初めてだったから3人ともアタシが銃で撃ち殺しちゃったんだよね。 車の中、血だらけだし、返り血は浴びるし、散々な目に合っちゃった。 今回は仲間割れさせて、毒入り缶コーヒーで仕留めるという、スマートな殺り方。 成長したね、アタシ。 これから、ヨーロッパに渡って、豪遊生活が待っているんだ。 とりあえず、また整形しよう。 今度はヨーロッパでモテる顔にしたいなぁ。 でも、また、お金が無くなったら、馬鹿な男捕まえて、 銀行強盗してもらおーっと。
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