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──Side 夏樹
「うちの女子は、ふたりとも綺麗どころだよな。タイプは違うけど」
「……はあ」
「平原、なんか雰囲気変わったと思わねえ?こう、色っぽくなったっていうか……」
「思いません」
「なにか知らないのかよ、おまえの教育係だろ」
「知りません」
──人の彼女を変な目で見るな。琴実も琴実だ。羽織も着ないであんな薄っぺらい浴衣一枚で現れやがって。湯上りなのにほんのり化粧してるし、唇はぷるぷるしてるし、髪はさらさらだし……。いますぐに部屋に連れ込んで、押し倒して攻め立ててやりたい。
「まあ、平原はともかく──相模は相当なもんだよな。中身はアレだけど」
「森内さんって、相模さんが好きなんですか」
「おい、どうしてそういう話になるんだよ」
「なんとなく」
「好きなわけないだろ。あんな派手で酒豪で彼氏をとっかえひっかえしてるような女」
「だから、彼氏じゃないっていうの」
背後から鋭い声が飛んできて、森内さんの肩が大きく震えた。軽く吹き出してしまい、すかさずキッと睨まれる。
「それに、わたしだって遊ぶ相手くらい選びます。森内さんはアウトかなー、好みじゃないし」
二階堂くんならいいけどね。語尾にハートマークがつきそうな勢いで言われて、「はあ……」と息を漏らすことしかできない。俺と琴実の関係を知っているくせに、冗談がきつい人だ。
「俺だって、おまえなんかアウトだよ。そんなことより、もう移動したほうがいいんじゃないか?」
「ああ、そうですね」
腕時計を見ると、すでに20時半を回っていた。そろそろ宴会場から撤退する時間だ。二次会用に借りている大部屋の準備をして、それから──。
まだ言い合いをしているふたりをよそに、スマホをちらりと覗き見る。5分ほど前に、「二次会の準備する?」と琴実からメッセージが来ていた。お願いします、と返して、誰にも見られないようにニヤリと笑う。
──準備を終えて、二次会に少し顔を出してから琴実に連絡しよう。きっと、驚いてくれるだろうな。
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