近況報告〈備忘録〉その①

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多分、それは今じゃなきゃダメだったんだと思う。 4月の終わり、日中の初夏の陽気も落ち着き、午後4時を過ぎたころには大分日も傾き、空は青色から薄青色、そして夕焼けの橙色へと変わっていく時間帯になっていた。昨年の秋以来約半年ぶりに外へと干した洗濯物を取り込む際に感じた草木の香り。実家のあった町よりは栄えているが、決して都会とは言えない静かな街。空気の入れ替えも兼ねて少し開けたままにしておいた窓の向こうからは電車の走る音と庭を手入れする機械の音が聞こえる。私は何かに感化されたようにパソコンの電源を入れ、今こうして文章を書き連ねている。 薄暗い部屋の明かりは点けず、ただ煌々と光るパソコンの画面と対峙する。スマホからは最近お気に入りの1曲をリピート再生。 コロナの影響で学校が休みになってから早いもので3週間が経とうとしている。その前の春休みからまともに外出できなかったし、実質1ヶ月半は経っているが。実家に帰ろうにも両親ともに多忙で、特に母親は医療従事者だから病院というどの場所よりも危険な場所で働いている。そんな中、県外にいる私が帰ったら。私が菌を持ち帰ることになるかもしれない。まだ元気な両親だが、二人とも人を相手にする仕事なだけあって濃厚接触は避けられない。見ず知らずの人を私が殺してしまうかもしれない。そう思うと恐怖心が湧いて、食料品などの生活必需品を買いに出かけることすら億劫になってしまった。 某同人作品投稿サイトで好きな作品の二次創作作品を漁り、自分でキャラクターに夢を見ては文章に起こせず妄想の種として消えていく。あとは食事をして、時々テレビを見たりゲームをしたり。家のことをやるにも気力ないため必要最低限になる。そういえば部屋の床を掃除したのはいつが最後だっけ。トイレ掃除とお風呂掃除は?洗濯物は溜まってない?色々と考えるが、考えているうちに眠くなって、起きたら次の日の朝。高校生の頃はあんなに望んでいた『自由』がいざ手に入ってもやることもどこに行くこともできないのが現実。 事態が悪化する前に故郷へと帰った友人たちは元気にしているようだ。同じ大学に通う友人たちはどうしているかな。最近始めたInstagramを見る限り心配することはなさそうだけど。特別親しくなかった子たちでもいざ会えないとなると寂しいものだ。 さて、ここまで近況をつらつらと書き述べてきたが、このある種の世界恐慌を忘れないように私はここに、全てが落ち着いたらやりたいことを残しておこうと思う。 この状況が改善されるのが何か月、何年先になるかは分からない。こんな生活をもう少し続けなければいけない状況で何か目標の1つでもないとやってられない。優等生(自分でいうのもあれだが平均以上の成績はキープしている)な私は学校の課題をも全て10日前に終わらせているのだから。 拝啓 未来の僕 国から給付された10万円で、好きなところに旅行に行ってください。きっと私のことだから大宮か名古屋に行くんじゃないかな。鉄道見に行くんだろうな。何が見たい?歴代の自分と同じ名前の新幹線を見に行く?少なくとも今の私は同じ名前を持つ日本を支える新幹線を見に行きたい。8歳も離れたたった1人の姉から貰った名前が、テレビの向こう側で活躍していると思うと、なんだか誇らしい。だからこの目で見てみたいんだ。見てしまったら目標を達成して満足してしまうかもだけど、その頃の私はすぐに次の目標を見つけると思う。 幼き日に抱いた今も変わらず叶えたい夢と、新しく見つけた人を支えたいという夢。両者とも誰かを笑顔にすることのできる仕事だけど、私は後者を諦めることにした。鉄道運転士になるという夢。すぐに壊れてしまったけれど、それほど私が鉄道が好きだということを忘れないように、この文章を備忘録とします。 少しでも早くこの状況が収まることを願って。
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