突然の電話

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突然の電話

 電話の呼び出し音が鳴り響いた。受話器を取るまで、鳴りやみそうもない。  夕食を終え、のんびりとテレビを鑑賞していた。  こんな時間に誰かしら?  時計の針は午後十時になる五分前だった。  嫌な予感がする。  電話をかけてくる相手に心当たりがないのだ。不安が占領する。  このまま無視すれば電話は鳴り止むだろう。それが出来なかった。 「私が出るわ」  先に身体が動いていた主人を制止させ、受話器を取った。  電話でかき消されたテレビの音が響いていた。 『もしもし……』  受話器の向こうから、聞き覚えのない男の声が聞こえた。 「はい……」 『久留田(くるた)さんですか?』 「いや、昔は……」  どう答えていいか困った。 『久留田啓太(くるたけいた)さんのお母さんですか?』  改めてフルネームで言い直した。 「そうですが……」  数年会っていない息子の名を言われ、動揺した。 『私は警察の者ですが……』  嫌な予感は的中した。考えないようにしていたが、そんなことは無理だった。このまま受話器を置いて何もなかった事に出来たなら、どんなに気が楽なことだろう。 「うちの息子が何か……」  と、言うしかなかった。
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