3人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
突然の電話
電話の呼び出し音が鳴り響いた。受話器を取るまで、鳴りやみそうもない。
夕食を終え、のんびりとテレビを鑑賞していた。
こんな時間に誰かしら?
時計の針は午後十時になる五分前だった。
嫌な予感がする。
電話をかけてくる相手に心当たりがないのだ。不安が占領する。
このまま無視すれば電話は鳴り止むだろう。それが出来なかった。
「私が出るわ」
先に身体が動いていた主人を制止させ、受話器を取った。
電話でかき消されたテレビの音が響いていた。
『もしもし……』
受話器の向こうから、聞き覚えのない男の声が聞こえた。
「はい……」
『久留田さんですか?』
「いや、昔は……」
どう答えていいか困った。
『久留田啓太さんのお母さんですか?』
改めてフルネームで言い直した。
「そうですが……」
数年会っていない息子の名を言われ、動揺した。
『私は警察の者ですが……』
嫌な予感は的中した。考えないようにしていたが、そんなことは無理だった。このまま受話器を置いて何もなかった事に出来たなら、どんなに気が楽なことだろう。
「うちの息子が何か……」
と、言うしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!