プロローグ

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 その日も私はいつも通り無邪気に庭を周回していて、池を回って五週目に差し掛かるところだった。池のほとりに咲いている淑やかな紫の花たちに見守られながら半周していたその時だった。泥濘に足を取られて転びそうになり、短い悲鳴を上げながら思わず手をついた。  浅瀬に手を突っ込んでしまい、びちゃりと水が跳ねる。手のひらに嫌な感触を覚えて、すぐさま手をどけた。そこには根元から折れ曲がってぺしゃんこになった花が一輪、水底に横たわっていた。
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