プロローグ

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花菜(はな)!」  悲鳴を聞きつけてきたのだろう、祖母が血相を変えて駆け寄ってきた。そして、神妙な眼差しですぐさま潰されてしまった花を見た。怒られるかと思ったのに、祖母は「ああ、よかった……」と胸を撫で下ろしただけだった。その反応に安心すると同時に、私は心のどこかで怒りを覚えた。 「なにがよかったの? お花さんがつぶれちゃったんだよ!」  非難がましく言いながらも花をつぶしてしまった罪悪感が込み上げてきて、涙が溢れてくる。そんな私を見て、祖母はにっこりと微笑んで、優しく頭を撫でてくれた。 「花菜はとっても優しいね。大丈夫。この子の代わりに新しい種を植えてあげればこの子の意思を継いだ花がまた綺麗にこの池の周りを彩ってくれるわ。新しい種、一緒に植えてあげようね」  こくりと肯いて、私は溢れる涙を拭ってほほえんだ。
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