プロローグ

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プロローグ

 幼いころの私は、祖母の家の庭を走り回るのが好きだった。  咲き誇る花々と萌黄色に囲まれたゆるやかな園路を進み、髪飾りのように花をつけたサーモンピンクの薔薇のアーチをくぐり、林道を抜けた先の池をぐるりと回って、また元の道に戻る。  そうして庭を駆け回っていると、移り変わる花々の色彩や香りの濃淡、草木の葉擦れの音、すべてが私のなかに流れ込んできて、この美しい庭の一部になれたような気がして嬉しかった。ずっとその感覚を味わっていたくて、私は祖母の家に来るたび、日が暮れるまで一日中庭を駆け回っていた。
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